〔オストヤワルコ〕Oztoyahualco

　地図を見つつ、現地ガイドが事前に聞き調査をしていた地域へ入っていくと、一面のウチワ・サボテン畑でした。クラフトビールや蒸留酒の原料で、メキシコでは実を食べます。

　畑の中に農家があり、小さなかまどがありました。かなりの年配者に尋ねると、「遺跡？　ああ、そう言われれば、昔、あったよな、あそこら辺に」と、サボテンの海を指差しました。「今はないよ」

　考古学隊が1959年に発掘できたのは、わずか26×28mだけでした。おそらくすでにサボテン畑を経営していた土地所有者が許可を出した範囲だけで、調査が行われたと推測します。発掘後、埋められて、場所は畑に戻ったのでしょう。

　レイアウト図を見ると、外側に部屋や通路が広がっていたと想像されます。

　レイアウト図の赤い線は、まとまりのある区画の範囲を仕切る壁です。つまり、発掘限界線内では、水色家族、緑色家族、茶色家族の3つが、集合住宅を構成していました。

　26×28mのあちこちに石灰の粉が固まっていました。石灰粉は漆喰の材料となります。3家族とも石灰粉製造が生業でした。

　3つの家族エリアは、各々に居住、厨房、中庭、祭壇、埋葬を含み、独立した生活が送れそうです。それぞれの祭壇のそばで、水色家族では〔トラロック神〕像、緑色家族ではウサギの姿の彫像、茶色家族では蝶の姿の彫像が見つかっています。家族神だったのでしょう。

　茶色家族のC-21という部屋で出土した劇場型香炉を載せておきます。

　↑at 壁画博物館。