寸劇４…西暦550年…都市崩壊とその後

　腹が減ってイラついたから、荒れた連中にまじって〔サーラ〕へ行った。そこの住民はどこかへ逃げた後で、誰もいなかった。棍棒で壊しまくった。積み木人形、神様だという彫像、陶器をぶち壊して回った。誰かが叫んでいた、雲母を奪え、と。カーテンなどの布が燃やされて、至る所で煙が上がった。そして街のいろんな箇所からも煙が上がっていた。

　１、〔太陽のピラミッド〕の南側の〔司祭の家〕が襲撃され、彫像の足が折られた。
　２、〔サーラ〕が大規模に襲撃されて、焼かれた。
　３、〔テオパンカスコ〕の中心部が焼かれた。
　４、〔ラ・ヴェンティラ〕では棟ごとの複数の出入り口が、一箇所だけを開けて、他は封鎖され、棟間の通路は封鎖され、一方向からしか入れないように制限された。
　５、〔羽毛の蝶の神殿〕が破壊される。
　なお、観光散歩では焼け焦げ跡は見当たりません。

　壊しても、疲れるだけだった。俺は〔職人の囲い〕で、ぼんやりしていた。思い出した、誰かが南へ三日歩いた場所で新しい都市が造られていると言っていた。劇場型香炉を造っていた腕を生かせるかもしれない。仕事があり、食えるなら、と俺は立ち上がった。

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　550年以降、テオティワカンは無人になったのでしょうか。そうではないようです。例えば、〔太陽のピラミッド〕の北回廊やちょっと東の洞窟、ラ・ヴェンティラでのこじんまりした住居跡が報告されています。小規模天水農業が微かに少数の住民を支えていたのでしょう。人口12万人を誇った都市機能が再生されることはありませんでした。

　西暦1300頃、大きな建物がたくさんある、とメシーカ帝国が聞きつけました。訪問し、「神々が生まれし町（＝テオティワカン）」と名付けます。メシーカ人は、半分土に埋まっていた石製の仮面を拾い集め、首都テノチティトランへ持ち帰りました。そして貝を嵌め化粧を施して、宝物庫にしまいました。さらには自分たちの中央神殿の両脇に、タルー・タブレロ建築様式に酷似した小さめの神殿を造りました。

　

↑古代メキシコ展（東京）。↑テノチティトランの赤の神殿。

　現代でいえば、遺物収集と建築物のリコンストラクションです。気の利いた考古学者が、最初の発掘者はメシーカ人だと書いていました。